K-POP、ハロー!プロジェクト、STARTO、坂道、48、スターダスト、アイドルという枠のなかで、これまでいくつものグループが誕生してきました。だけど、盛者必衰が世の理。
永遠であってほしいと願っても、それぞれの終わりに直面します。
あるメンバーはやり切った晴れやかな顔で卒業を、またあるメンバーはスキャンダル報道から逃げるように脱退を。
あるグループは過去最大キャパで、またあるグループは急拵えの適当な箱で解散していきました。
いろんな事例を見てきても、やっぱり自分の推しのグループの終わりにはうまく対応できなかったりもします。
わたしの場合はカントリー・ガールズというハロー・プロジェクトのグループがそうでした。
ももちこと嗣永桃子にびしばしアイドル指導を受けて、笑いとあざとさを武器に愛あるグループに成長していった彼女たち。でもももち卒業のあと、箱は残ったまま、メンバーはそれぞれ他のグループに合流することに。ハロプロ全体のコンサートと年に数回の単独公演を除いて、カントリー・ガールズとしての活動を見ることはできませんでした。そして全員のグループ卒業が決定。
CDセールスやコンサート集客などを見ていれば、そうなる判断が理解できないこともなかった。
だけど、ずっと悔しく、メンバー全員の卒業に納得ができずにいました。
しかし、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」というアニメを観たとき、そのもやもやが霧散したのです。
アイドル・グループのことを描いた作品ではありません。しかし、このアニメには表現者たちの輝きが、その区切りが、その先が描いてあります。
そして今回、5/16から5/30までYouTubeの公式チャンネルで「劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト」が無料公開ということで、少しでも多くのひとに観てもらうべく、筆を取りました。推しの卒業や解散で苦しい思いをしたひとたちに、本作をぜひ観てもらいたいのです。長文になりますが、魅力を読み取っていただけると幸いです。
かんたんな物語紹介
名門演劇学校「星翔音楽学園」。舞台女優を目指す少女たちが集うこの学園の、第九九生による青春群像劇。夢を追いかける舞台少女たちが、それぞれの想いを力に変えてトップスターを目指すストーリーです。
てっとりばやく理解するならTVシリーズの再構成版である「再生産総集編 少女☆歌劇レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド」から観てみるのはどうでしょうか。
こちらも期間限定で無料公開中。
それぞれのキャラクターの想いの原点を確認することが可能です。
もちろんこれを観ずに完全新作として公開された「劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト」だけを観てもしっかりと感動を覚えられるはずです。お好きな視聴方法でどうぞ。
挫折、失望、執着、それぞれの胸のうち
ここからは完全新作として公開された「劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト」の話をします。
本作はTVシリーズの物語のあとから、登場キャラクターたちの卒業までの一瞬を描いた、いわゆるエピローグです。
舞台に関わる夢を持ってあつまった九九組のメンバーですが、卒業したあとは分かれ道。
卒業を前にしてそれぞれの生徒は目標を失ったり、日本の名門劇団を目指したり、元の道に戻ったり、進学したり、と将来の展望を語ります。
それぞれの未来は輝かしいものですが、この作品ではそれに疑問を投げかける人物が現れます。
「本当にこれで満足しているのか?」と。
逆ギレに近い動機でも、導かれるように本心を打ち明け始める少女たち。
そのどれもが視聴者からしても納得のもの。TVシリーズで都合よく扱われたキャラクターたちの本心が演目の最中に描き出されます。
挫折の痛み、失望や嫉妬、そして執着。
アニメーション映画ですが、それぞれの主張がどれも人間らしく、青春群像劇の終わりに相応しい情熱を感じられます。
わたしは彼女たちの言葉を聴きながら、実際のアイドルたちの胸のうちを想像しました。
きらきらしている姿のうらで、どんなことに思い悩んでいるのだろう。
物語を動かす、あるキャラクターの言動は、卒業するメンバーや解散するグループのファンに近いのかもしれません。彼女が何を問うのか、何に怒っているのかはぜひ作中で確認してみてください。
表現者としての矜持 華やかなラスト・ステージ
劇場版なだけあって、演目のシーンでは迫力満点で華やかなステージが展開されます。
それはまるでアイドルの卒業コンサートのよう。
こればかりは映画館で観てもらいたいのですが、まずは仕方ありません。YouTubeでぜひ。
映画館で見ると数倍素晴らしく感じられるミュージカル・シーンだと約束します。5/31から全国のイオン・シネマ71館で再上映がありますのでぜひ情報を確認してみてください。
https://cinema.revuestarlight.com/news/1017/
卒業コンサートといって、わたしがイメージするのはハロー!プロジェクトですが、ハロプロの卒コンはとても不思議な空間です。悲しいけれど、卒業するアイドルたちの涙や渾身のパフォーマンスは他のどの公演よりも美しいのです。メンバー、スタッフがその舞台に賭ける想いがそうさせるのでしょうか?
K-POPではなかなか観られないのが良いのか悪いのかって感じですが、卒業コンサートは華やかであればあるほど良いです。盛大に送り出してもらう公演が至高。
そのステージに到達できないひともたくさんいますから、推しが最後までステージに立ってくれたみなさんは推しと、他のメンバーと、スタッフと事務所に感謝しましょうね……。
最初に書きましたが、わたしが本作を観て思い出したラスト・ステージはカントリー・ガールズのものでした。あの公演も、発した言葉以外の物語や想いがうっすら滲み出る素敵なものだったな、アニメにしたら、こんなこと言うんだろうな、なんて考えながら。
良いラスト・ステージでした。
物語からの解放 未来がかがやく
結果として、この映画の最後は「レヴュースタァライト」という物語からの解放へと進んでいきます。その光景もぜひ作中で確認ください。
そしてわたしの見方でいうと、アイドルたちに沿った考え方をしないといけませんね。
そうです。
アイドルも、グループから卒業したあとは自分たちの人生に再び向き合います。
この映画を見終わったあとにわたしは思いました。その進路に正解も不正解もないと。
アイドルをやめて社会に戻るひと、マイペースにソロ・アイドルとしてステージ活動を続けるひと、アーティストとして表現のレベルをさらに高めるひと、そして、もう一度別のグループに加入してアイドル人生を存続するひと。いろんなひとがいます。いろんな理由があります。
ファンとして、推したちの決断にああだこうだ言える権利なんかないんです。
例え将来のヴィジョンが見えなくても。例え二度と舞台で出会えなくても。
でもそれは決して不幸なことでありません。この映画は、ファンのわたしたちに素敵な言葉を残してくれます。
それが主題歌「私たちはもう舞台の上」の歌詞。
”まぶしいからきっと見えないんだ 私たちの行き先 だから心配しないでね まっすぐな道ばっかじゃないけど大丈夫 心に歌があれば”
グループを卒業しても、道は続いていく。アイドルたちも、そしてわたしたちの道も。
そして、卒業後も、彼ら彼女らが歌っていた楽曲はわたしたちのなかにちゃんと残ります。
そのエネルギーを、この映画を通して再確認させられました。
アイドルファンであれば、この映画を観た後きっと、九九組の曲と一緒に推しグループの曲を聴きたくなるはずです。わたしが実際そうでしたから。
わたしがそのとき感じた嬉しさを、ぜひみなさんにも体験してもらいたい。
YouTubeで無料公開という、これまでで最も観るハードルが低い機会が今回ありましたので、筆をとってみた次第です。
興味がわいた方は下のリンクからぜひ観てみてください!
よかったら、感想を話し合えたらと思います。それでは。