韓国の大手事務所SMエンターテイメントから2007年にデビューした9人組ガールズ・グループ少女時代。K-POPに興味が湧くのが遅かったわたしでも、2010年の日本デビュー時の人気っぷりは記憶に新しいです。
数々のヒット作、賞を獲得しながらも、現在の活動はひとりが脱退、残りのメンバーもそれぞれが独立したかたちで行われています。
それでも、2022年には8月には8人体制でカムバック作「FOREVER 1」を発表し、根強い人気を証明しました。(2020年にK-POPにハマったわたしにとってはそれが唯一の熱心に追えたカムバ)
わたしも後追いながら今年アルバムを前作聴き通して、その凄みや面白みを実感することができました。今回はメンバーのひとり、スヨンの日本ソロ・デビュー作「Unstoppable」が10月30日に発売されることを記念して、少女時代を聴き通して楽しかったところを記事に書いていこうと思います!
代表曲「Gee」と「Genie」のリリース順の面白さ
少女時代の1、2位を争う人気曲「Gee」と「Genie」。
ファースト・アルバム「Into The New World (また巡り逢えた世界)」から聴き始めて、日本のアイドル文化との差別化や共通点を探りながら進んでいくなか、まず衝撃を受けるのがこの2曲でした。
ほぼK-POPを聴いていなかったような自分でもMVも見て、知り合いの誰がカラオケで歌って、とフルで聴いたことは何度もあった曲たちですが、改めて耳を澄ませて聴くと彼女たちがこれらをきっかけに世界的なスターになった理由が明瞭に理解できました。
そして、今年初めて韓国リリース順で聴いたわたしとしては、どうしても浮かんでくる違和感。その正体について書いていくのでまず下記のリリース順をご覧ください。
韓国
「Gee」 2009年1月5日発売 − 1st ミニ・アルバム
「Genie」2009年6月22日発発売 −2nd ミニ・アルバム
日本
「Genie」2010年9月8日発売 −日本1stシングル
「Gee」 2010年10月20日発売 −日本2ndシングル
いや、まず日本のリリース間隔短過ぎやろ、というのは置いておいて、
韓国と日本でこの2曲、リリース順が逆なのです。それによってこの強力が2曲が異なる響き方をしている、と後追いのわたしは思いました。それが違和感の正体です。
韓国リリース順で聴くと「Gee」は間違いなく前作から地続きの世界です。
韓国のクリエイターE-TRIBE作詞作曲編曲によるこの曲は、当時のエレクトロ再興、オートチューン全盛の時代におけるトレンドに沿った楽曲。それでありながら、この究極のキャッチーさ、かわいらしさは「Kissing You」に代表されるような最初期の少女時代の流れを感じさせます。
そして「Genie」はさらにエレクトロのムードを強め、K-POP屈指の蠱惑的なリフレインがなり続ける。当時のトレンドに”沿った”以上の、先進的なパワーがあります。クリエイターも韓国ではなくノルウェーのチームから版権を購入したもの。にわかながらもSMエンターテイメントの音楽性を支えたのは北欧だ、という認識があるので、この曲のクレジットを見たときに、ここらへんがゲームチェンジャーなのだな、とわかりました。
以上のことから、韓国のリリース順で聴くと、「Gee」でワンランク上の存在になり、「Genie」で音楽性がぐわっと広がるイメージが自然と浮かんでくるのです。
そして日本のリリース順で聴くと、「Genie」で”君臨”し、「Gee」で人々のこころを掌握するようなイメージ。
韓国から日本に進出するにあたって、明らかに評論家受けする「Genie」を先に出し、本格派という眼差しを集めたあとに、キャッチーさで上回る「Gee」をリリースした、というのは、どこまで計算なのかわかりませんが、すごい嗅覚だな、と思います。
これ考えたひと誰なんでしょう?イ・スマン?HYBE JAPANの現社長?
人気と実力を積み重ねた先に 第5集「Lion Heart」
さらに韓国の作品を追っていって驚いたことが、
少女時代って意外とEDMじゃないんや
ということ。元々のファンからしたら当然ご存じだと思うが、当時日本シングルしか聴いていない(ぎりRun Devil RunとThe Boysは聴いてました)ひとからすると、少女時代=EDMであり、後追いのK-POPファンとしても、音楽性は2016年頃から変わるのかな?と思っていました。
しかし、少女時代がEDMに傾倒しているのは「Oh!」とそのリパッケージの「Run Devil Run」くらい。
他の作品ではEDMは彼女たちの表現のひとつでしかなく、様々なジャンルでアルバムが構成されています。そして聴いていて楽しかったのが、アルバムをリリースするごとに彼女たちの音楽性が飛躍していくのが目にみえてわかったこと。
それの極地が5thアルバム「Lion Heart」です。
モータウン風のリード曲、エッジの効いた態度で歌い唸る「You Think」、そのほかにもボサノヴァもダンサブルなポップスも揃った色とりどりの一枚。
スターとしての余裕も、覚悟も示しながら、あくまでキャッチーさと高い音楽性を両立させていて、このアルバムは聴きながら感動しました。
以降の作品を聴いても、やはりこのアルバムが少女時代の完成形であると感じます。
それにしても、パフォーマンス、ヴィジュアル、音楽性、どれをとってもおそるべき成長の速さ。少女時代の進化が、そのままK-POPの進化を表しているように思えました。
独自進化!もうひとつのディスコフラフィー in 日本
そして日本でのディスコグラフィーも、いま聴き返してみるととっても面白い。
韓国でリリースされた楽曲の日本語詞版も頻出しますが、それを抜いても独自の成長を辿っています。
「Genie」と「Gee」のあとリリースされた楽曲をみてみると、
「Mr.Taxi/Run Devil Run」
「PAPARAZZI」
「Oh!」
「FLOWER POWER」
「LOVE & GIRLS」
「GALAXY SUPERNOVA」
「Catch Me If You Can」
とEDM路線を突き進み、さらに歌詞の面では韓国曲以上に”強いオンナ”感を前面に打ち出しています。
3枚リリースされた日本のオリジナル・アルバムを聴いても、EDM路線やアマゾネスのような歌詞の進化に圧倒されます。実際のところ、日本活動も段々ジャンルが広まっていくのですが、韓国のようにシックな雰囲気とはまた違う姿に変貌していく様子も楽しいです。
音楽性の飛躍が楽しい韓国活動、スターとしてポップなDIVAスタイルを突き進む日本活動、どちらも少女時代そのものであり、優れた2本柱であることが、彼女たちの本当の魅力。後追いでも楽しめるバリエーションの広さなのだと思います。
いまでもソロ活動で様々な晴れ舞台に登場する彼女たち。
そんな彼女たちの原点とも言える”少女時代”を、今からでもぜひ目撃してみてください。