祝!サブスク解禁!太陽とシスコムーン「TAIYO&CISCOMOON 1」は世紀末平凡女の行方を占う名盤です。

    本日6/7、ついに太陽とシスコムーン/T&Cボンバーの全曲がサブスク解禁となりました。
    公式X

    太陽とシスコムーンとは1999年にデビューし、オリコンTOP10にもランクイン経験のある元ハロー!プロジェクトのグループ。オーディション番組「ASAYAN」にて、芸能経験のある女性を対象にしたオーディションで選ばれた四人組です。

    つまり元祖鯖番王者?元祖QUEENDOM PUZZLEってコト??

    そうなりますね。元々の活動期間は長くなかったのですが、その後色々あり、現在も米国在住のRuRuを除いた3人でハロプロのアニヴァーサリーステージに立ったり、単独イベントを開催したりして活動を続けています。

    元ソウル五輪体操代表の信田美帆、元大阪パフォーマンスドールの稲葉貴子、民謡の家元小湊美和、中国人歌手本多RuRuというフィアースな組み合わせ。
    そのパンチ力に乗せられて、楽曲ももちろん強烈です。

    今回はそのなかでもとくに素晴らしいファースト・アルバムについて語りたいと思います。

    目次

    焦り・憧れ・根性・性欲のるつぼ

    プロデューサーのつんく♂が太シスに託した属性。
    それはいまの言い方で言うと”かわいいとは言えない”。
    マイルドな言い方をすると”平凡なヴィジュアル”。
    当時言われていた言い方をすると”ブス”です。

    例えば彼女たちの最大級のヒット曲であり代表曲である「ガタメキラ」。

    タイトルも十分強烈ですが、サウンドも重厚なコーラス、スラップ・ベースがみっちりとつまったファンク・ナンバーで気合いの入り方が段違い。そんなセカンド・シングルですが、強烈なのはその歌詞。

    「もうちょっとマシな顔なら もうちょっと本気で私愛してくれたの?」

    火の玉ストレート。この他にも、太シスにあてられた歌詞は2番手、目移りされる存在であり続けます。そのポジションで発せられる焦燥感や、嫉妬、不屈のマインド、尽きない性欲に視線を向けることが太シスを堪能するコツであり、きっとこれが令和のセルフラブ時代とは違う、当時のエンパワメントの一種だったのでしょう。少しひどいようにも思いますが、つんく♂はそういう瞬間に滲む本性、情念が大好物であり、実際描写力も上手いので、いま聴いてもそこまで不快感はありません。……いまの時代でも成立するのかは謎。
    でもこういう楽曲のシチュエーションで滾る瞬間って皆様にもありますでしょう?

    「Magic of Love」のサビ頭の歌詞が「通算」であることの妙なども後世に伝えたいところですが、この「ガタメキラ」の歌詞、全体的にもキラー・フレーズ満載です。

    わたしが好きなのは
    「立場・水・流行言葉」
    よくある単語の羅列ですが、楽曲のムードに沿って聴くと、
    ”一度手にしても流れ去ってしまうもの”の羅列であることがわかります。

    つまり、この楽曲の恋愛の不安定さを描写しているのですね。

    はぁ、すっごい。すっごいギラギラしてる

    彼女たちのファースト・アルバム「TAIYO&CISCOMOON1」にはこのように官能的な歌詞の楽曲がたくさん入っております。サブスク解禁嬉しすぎますね。

    本気の恋愛、遊びの恋愛、失恋、悲劇、そして最後は……。
    平成的、20世紀末的なヲンナ恋愛一代記。みなさんもぜひ歌詞のストーリーの流れに注目して聴いてみてください。

    合言葉は「そうよ女だって wow wow wow ahaha!!!!」
    ヴィジュは平凡でもヲンナは強い!!!!!!!!!!!!!!

    90sブラック・ミュージックのつんく♂ローカライズ

    モーニング娘。よりコア志向だった太陽とシスコムーン。
    このブログでも書きましたが、つんく♂はR&Bやモータウンなどのブラック・ミュージック愛好家。ハロプロをプロデュースをするにあたってニューヨークでも本場の空気を視察したりしていました。昔マガジンで掲載されたつんく♂物語でそう言ってました。(ソースどうなってんの)

    結果として1998〜2000年頃に作成されたハロプロ作品はその傾向を大いに反映された本格派志向の和製ブラック・ミュージックが多く、とくに太シスの作品はつんく♂のブラック・ミュージック愛の結晶とも言えます。

    デビュー曲「月と太陽」は夜の繁華街の騒がしさと情熱、虚しさを詰め込んだ歌謡曲ライクなディスコ・ハウス。まずここからサウンドがいま聴いてもかっこよすぎる。

    tripleSでカヴァーしませんか、ビョンギさん(だめですよ)

    本格派R&Bを目指すにあたって、この官能的なムードも米国のマスターピースに倣ったものだと考えても良いかもしれません。太シスファーストに用意されたイントロ、インタールード、アウトロ構成も同じく。アルバムとしてのプロダクト作りにおいてこの気合いの入れようは、他のハロプロのアルバム、25年間を通してもタンポポの「TANPOPO 1」と松浦亜弥の「ファーストKISS」くらいしか同格のものを思いつきません。

    歌謡曲のアツいメロディーと、徹底したヴォーカル・ディレクション、そしてダンサブルなサウンドの組み合わせ、とても魅力的です。

    日本で活躍したR&B歌手は何人もいますが、太シスの楽曲たちももっともっと評価されて欲しい。このサブスク解禁が良い方向に導いてくれると信じます。

    R&Bでいうと昨年NewJeansのEPを聴きながら「!!」と存在を思い出した「Be Cool Down」を推したいですが、シングル「Everyday Everywhere」も歌唱力の限りを尽くした当時の流行サウンド対応のR&Bバラードです。熱唱だけじゃなくてウィスパー歌唱も芳醇なのが彼女たちの強みですね。

    本格派志向は色褪せない!

    すでに再評価の傾向にある「Magic of Love」はあえて今回は言及はしませんが、ゴージャスなオケとコーラス・ワークの旨みはやっぱり何度聴いても素晴らしいです。

    他にも日本語ラップの太シス解釈「Hey You!」、ロックHIP-HOP「Sunrise それでも陽は昇る」の脱力感とサウンドのかっこよさのギャップはいま聴くほうが面白いのではないでしょうか。
    HIP-HOPを取り入れるにあたって、つんく♂はあえてのダサさを香り付けするのが好きでしたよね。

    そして絶対に聴いていただきたいのが9曲目「沈黙」です。
    初期タンポポ・ワークスにもつながるようなアダルトなジャズ/ボサノヴァ。

    上品なトラックのなかで一際官能的なフルートの音色。

    なんとヴォーカルは常にぶつ切りで、常に右から左へ左から右へと配置が移動していきます。

    この計算された蠱惑感。ハロプロだからと舐めている場合ではありません!
    いますぐ再評価の準備をしておいてください!!!!

    そんな名盤「TAIYO & CISCOMOON 1」以外でも、月と太陽のカップリングのR&B歌謡「GET ON MY LOVE」、ガタメキラのカップリングの「月と太陽」のリミックス2曲、宇宙でLa Ta Taカップリングの「ガタメキラ」のリミックス2曲、Everyday Everywhereカップリングの「宇宙La Ta Ta」リミックス2曲、ここらへんは本当に損させません。いま聴いてもなおクラブ対応可能なゴージャスなサウンドばかりです。

    T&Cボンバー時代も含め、この潤沢なディスコグラフィーを味わいましょう!
    最後に、あのマツコ・デラックスが狂うほど愛したアシッド・ジャズ的アプローチの名曲でおわかれです。

    目指せ太陽とシスコムーン、令和の再評価!!!!!!!!!!!!!!!!!

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