ヴィレッジヴァンガード。
それは遊べる本屋、もとい兵どもがゆめのあと……。
かつてのサブカルチャーが混ざり合っては消えていった場所。
この20年のなかで地方のさらに地方のショッピングモールに根付き、背伸びした中学生たちを呼び込む魔窟へと進化(といっておきます)を遂げました。近所の店舗を覗く限り、いまの主要戦力はちいかわ、おぱんちゅうさぎかと思われます。
かつてわたしもこの場所に呼び込まれました。
時期としては15年以上前でしょうか。高校時代、地方のPARCOの上のほうで、友だちが葉っぱ(意味深)の缶ペンを買ったのを横で見ていました。それから進学先の北九州は小倉で、コレットという、ジェラートピケとZARAと本屋の記憶しかないデパートの店舗に通いました。大学1年生のころです。syrup16gとチャットモンチーの歌詞を生活を重ねすぎてミニシアターの幻影に身を霞ませていたころの話です。
たくさんの思い出があります。
クリスマス・プレゼントを買ったり、誕生日プレゼントを買ったり、自分を労ったり。
いろんな漫画や雑貨を買いました。買えずに我慢したままのものもあります。
そんな思い出をこの企画では振り返ってみようと思うのです。
宮崎駿「風の谷のナウシカ」全巻セット
いまよりももっとみんながにこやかに「ジブリで一番好きなのなに〜?」という話題で盛り上がっていたあの頃。
飲み会で当時出たばかりの酎ハイ「ほろよい」なんかをのんでいると、「でもナウシカの映画って漫画だと本当に序盤だけだからね」という話題が出てきました。そうです。少しでもジブリに詳しいひとのほぼ必読本、宮崎駿「風の谷のナウシカ」ワイド版の話です。
映画よりもさらに世界観も登場キャラクターも大幅に広がる完全シナリオ。
実際はもっと醜悪で、もっとスピリチュアルなストーリーが展開されるもので、当然ヴィレヴァンにも全巻セットが箱で置いてありました。そして、大学生が当時買うにしては少し値が張るものだったので、バイトを頑張っている先輩しか持っていませんでした。自分もその先輩から譲り受けた記憶があります。
いまはどうでしょうか?自分もさすがに最近はこの話題に遭遇しませんが、昔本当にこれを言い出すひとと会いました。旅行先の東京でも大阪でも、そして九州でも。
まぁ正直結構おもしろいです。漫画版。
相対性理論「シフォン主義」「ハイファイ新書」
聴きごたえのあるバンド・サウンドとかわいらしい女性ヴォーカルの組み合わせ。2010年の覇者は間違いなく相対性理論であり、おそらく彼女たちがここまで売れたのはヴィレヴァンが大々的に売り出したからだと思われます。
斜に構えたメガネの先輩も、大学デビューあの子も、そして自分も、なんだかんだ聴いておりました。ロックバンドの演奏が上手いのって、いまでは割りと当たり前ですが、それはシティポップのリバイバルを経てからだと思います。
シティポップが流行る少し前の理論が売れ始めた頃は、そこまでインディーズ・バンドにテクニックを求められている印象はなかったため、彼女たちの存在は異彩を放っていました。
う〜ん、もしかしたら相対性理論の存在もあるかもしれない。
この頃注目されていたバンドの演奏力が、いまのバンド演奏のレベルの高さに繋がっているのかもしれませんね。
そしてヴィレヴァン、本屋なのにやたらとCDが並んでいました。他に印象が強いのは……
中田ヤスタカプロデュース Perfume、capsule
万引き防止のゾーンを潜るとそこにはWONKAチョコレート(チャーリーとチョコレート工場のやつ)とハリボー……が並ぶ少し前、そこにはcapsuleの「MORE! MORE! MORE!」が並んでおりました。そしてその隣にはPerfumeの「GAME」通常盤。
2009年前後の日本、訪れたのはエレクトロ・リバイバル。
世界でKylie Minogue、Daft Punk、Lady gagaなどが蘇らせた80sの風が日本でも吹き荒れていました。
日本でそれを牽引したのが中田ヤスタカ。
ヴィレヴァンではcapsuleを主として(時代によっては「sugarless GiRL」、わたしの世代は「FLASH BACK」〜「MORE! MORE! MORE!」です)、Perfumeの「GAME」通常盤やコンベス、コルテモニカなどが棚に大々的に陳列されました。鈴木亜美は取り扱いなしだった記憶。
ヴィレヴァンは流行りを反映する場所だったのですね。
ちなみにPerfumeに関しては2冊の写真集も置いてありました。
当時3人もまだ大学生。ラジオであ〜ちゃんが激病みしていた頃です。
臨死!!江古田ちゃん エロとシュール
「羊毛とおはな」のようなJ-POPカヴァーCD、小島麻由美、「椎名林檎 RINGO FILE 1998-2008」のような芸能人の書籍、100パーセントオレンジ……頭に浮かぶの商品をあげたらキリがありません。
なかでもよく購入していたのは、アフタヌーンやコミックビームなどの少しだけ厚みのある単行本。
記憶に強く残っているのは「臨死!!江古田ちゃん」というアフタヌーンで連載されていた漫画です。
エロにあけすけで、少しシュールな……ギャグ漫画だったのでしょうか、あれは。
自分も数冊買いました。
エロとシュール、結構ヴィレヴァンの主流のゾーンだったかと思われます。
なんか少しセクシーな本もあった気がしますね、緊縛ものとか。思い出そうとすると蜷川実花の写真集が邪魔をしてきます。蜷川実花の写真集はめちゃくちゃ並んでましたよね。
当時ヴィレヴァンでどんな漫画を買ったのか、どんな漫画が置いてあったのか、徐々に思い出していきたいと思います。
ちなみにおそらく今メイン格で置いてあるであろう市川春子の初期短編集はヴィレヴァンにはおいてありませんでしたね、当時は。
自分は小倉駅にあるアミュプラザの上のほうにある書店で買いました。書店名も覚えていないのが悲しい。
ヴィレヴァン離れ 現30代前半のきっかけ
ちなみに大学3年くらいになると状況は一変します。先輩たちとの飲み会で「あんなところだせえよ」「そうっすよね、自分も最近はいきませんわ」みたいな会話が出るようになりました。
その状況にショックを受けることもありませんでした。
そうなんです。その頃には自然と、自分もヴィレヴァンを卒業していたのです。
たくさんのカルチャーを知って窮屈になったから、大人になってサブカルを客観視するようになったからなど、原因は色々あると思いますが、当時のたくさんの人間の認識を動かしたのはこの2作品でしょう。
久保ミツロウ「モテキ」(漫画1巻は2009年発売、ドラマは2010年、映画は2011年)
渋谷直角「カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生」(2013年)
いわゆる「サブカル(笑)」の自尊心をメタ的に痛めつけて描いたこの2作品の社会的なヒットが、ヴィレヴァンから当時の若者の足が遠のいた原因だと思われます。
でもこの2作品、当たり前のようにヴィレヴァンにも置いてあったんですよね。
懐は広かったのかな……。
この過去を振り返る企画、意外と友人と話していると盛り上がるので皆さんもぜひやってみてください。このブログでも、今後友人を交えて何回か思いだす企画をやりたいと思います。
それでは!