「少女革命ウテナ」のエピソード・タイトルの文学性にいつまでも憧れ続けている。

    「少女革命ウテナ」というアニメがあります。
    「新世紀エヴァンゲリオン」とともに、セカイ系アニメの祖のうちのひとつのようなポジションで語られることも多い、1997年放送、幾原邦彦監督によるアニメ作品。

    わたしはこの作品を、社会人になってから見ました。
    ある程度バランスのとれ始めたころになって見たのでメンタリティ的に多大な影響を受けた、ということはないのですが、やはり多くのひとと同じように、時に飽き、時に泣きながらこの作品を愛するようになりました。

    この世界における王子様幻想、少女とは、少女漫画とは、女性とは、少年とは、男とは、大人とは、そして、生死とは。
    そんなあらゆるものについて思考をめぐらす一助になる作品であることは間違いありません。
    とくに中盤の”黒薔薇編”に関しては、いまでも誰かに薦めたくて仕方のないパートだと感じています。

    ですが、今回はそんなウテナについて深堀りするつもりはないのです。
    それよりももっと浅い、それでも自分のなかに熱い想いが湧き出てくるものについて。

    目次

    エピソード・タイトルがかっこよすぎるんじゃ

    コピペするのが一番早いと思いつつ、写経するつもりで全部手打ちしたのでとりあえず全話のエピソード・タイトルをご覧ください。

    薔薇の花嫁
    誰がために薔薇は微笑む
    舞踏会の夜に
    光さす庭・プレリュード
    光さす庭・フィナーレ
    七実様御用心!
    見果てぬ樹璃
    カレーなるハイトリップ
    永遠があるという城
    七実の大切なもの
    優雅に冷酷・その花を摘む者
    たぶん友情のために
    描かれる軌跡
    黒薔薇の少年たち
    その梢が指す風景
    幸せのカウベル
    死の棘
    みつるもどかしさ
    今は亡き王国の歌
    若葉繁れる
    悪い虫
    根室記念館
    デュエリストの条件
    七実様秘密日記
    ふたりの永遠黙示録
    幹の巣箱(光さす庭・アレンジ)
    七実の卵
    闇に囁く
    空より淡き瑠璃色の
    裸足の少女
    彼女の悲劇
    踊る少女たちの恋
    夜を走る王子
    薔薇の刻印
    冬のころ芽ばえた愛
    そして夜の扉が開く
    世界を革命する者
    世界の果て
    いつか一緒に輝いて

    七実が主人公のときのタイトル、邪魔っすね……!?
    話がブレるからやめてください……と言いつつ「幸せのカウベル」は大好きなわたしです。
    どうでしょう?難しい言葉は使っていないのに、文学少女・少年だったときの記憶がくすぐられるような、含みのあるタイトルだと思いませんか?わたしが小説家であったなら、ウテナのエピソード・タイトルをオマージュしたい。文字面よりも、声に出したときの気持ち良さのほうが好感が持てます。これは本当に文章を読みまくってきたひとが考えてる……とわかるような気がするからです。「永遠があるという城」……良いですね……「踊る少女たちの恋」……良いですね……。(いったいなに)

    ”薫 幹、そして梢”エピソード軸のこだわり

    「少女革命ウテナ」の構造は、生徒会もしくは脇役に回をまわしてフォーカスを当て、それを3周ほど繰り返すことでキャラクターの執着心を深堀りしていく、というもの。

    生徒会のメンバーのひとり、薫幹のエピソードは印象深く、さらにそれぞれのタイトルも秀逸です。まず、幹の執着する相手はアンシー、かと思いきや双子の妹の梢です。幹を象徴する、そしてふたりを繋ぐモチーフはピアノ。それを頭に入れて幹回のタイトルを観ていきましょう。

    光さす庭・プレリュード
    光さす庭・フィナーレ
    その梢が指す風景
    幹の巣箱(光さす庭・アレンジ)

    「光さす庭」とは全編を通して流れる副主題のようなウテナの劇伴のタイトルであり、幹と梢が過去に連弾した楽曲です。

    幹はその穏やかな思い出に執着しているわけですが、幹と梢というネーミングの残酷さ、男女におけるそれぞれの愚かさが、幹回では浮き彫りになります。
    それを踏まえてつけられたタイトルは、アニメを見たあとだとことさら味わい深いですね。

    ”有栖川樹璃”エピソード軸という至高

    そしてわたしが最も夢中になり、このアニメをひとに薦める理由となっているのが有栖川樹璃というキャラクター。彼女が執着するひとは幼馴染である枝織です。
    幹と梢と近いようで、もっと大きな差がある名前ですね。樹と枝なんですから。
    彼女のエピソード・タイトルはこちら。

    見果てぬ樹璃
    死の棘
    闇に囁く
    空より淡き瑠璃色の

    枝織のグロテスクさを象徴するような残酷なタイトルが並びます。
    わたしがまず好きなタイトルが「見果てぬ樹璃」です。
    ”見果てぬ”という言葉の意味を改めてみていきましょう。
    ”見果てぬ”とは、最後まで見ることができない、という意味。

    このタイトルの通り、樹璃というキャラクターは、最後の最後まで心のうちを開こうとはしません。滑稽に映る男性キャラクターと違い、樹璃はネタ扱いなどを含めても最後まで高尚な態度であろうとします。

    そんな矜持を誇る樹璃が、その後のエピソードでどう深堀りするのか、彼女が執着する枝織とはどんなキャラクターなのか、もうこれはここでは書きたくないです。世界中のひとに見てほしい。大好きです、樹璃回。

    声優に関してもこのふたりは強烈で、まず月野うさぎ、葛城ミサトを経てさらに演技力を深めた三石琴乃さんが樹璃役。枝織役の西原久美子さんはダイアナ(セーラームーンSupers)の声のひとですからね……あんなに可愛らしい声でこのキャラクターですよ。まぁその後演じるフィン・フィッシュ(神風怪盗ジャンヌ)は枝織役を評価されたとしか思えない配役ですが。笑
    瑠果の声も佐々木望ですし、ウテナの声優って本当に豪華ですよね。

    話がずれましたが、こんなふうに、ウテナのタイトルは内容を知れば知るほど面白みがでてきます。
    U-NEXTなどのサブスク配信もやっていますし、たまにYouTubeでも放送されるのでひとりでも多くのひとに見ていただきたいな〜と思います。大好きなアニメです。

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