こころを何に例えよう?初のソロ・アルバムで見るジェヒョンの表情 – J The 1st Album

    NCT DOJAEJUNGのファーストミニアルバムが「Perfume」だと知ったとき、なんてジェヒョンのユニットデビューにぴったりなタイトルだろうと思った。当然ドヨン、ジョンウの持つ華やかさ、清涼感も表現されながらも、NCTのなかでここまでウッディな香りの雰囲気を漂わせるのはジェヒョンしかいないと思った。

    そして8月26日についに果たしたソロデビュー、そのアルバムに並ぶ曲名を見たときに、やっぱりぴったりなタイトルだらけだと思ったのだった。

    NCTから4人目のソロ・アルバム発売となったジェヒョン。

    テヨン、テン、ドヨン、どれも素晴らしかったのだけど、ジェヒョンのそれはそのどれとも異なるムードを持つ。

    SM STATION、NCT LABでこれまでリリースしてきた作品はその試金石だった。その時点で見えた内省的で鈍色のひかり。なかでもファン、リスナー、それどころかスタッフも大きな手応えを感じただろう作品がある。

    それがSMを通したRemixプロジェクトであるiScreaMにて発表された「Forever Only (SHINDRUM Remix)」である。

    シンプルでアコースティックなR&Bだった原曲を、エクスペリメンタル・ジャズの趣にひっぱったリミックスだった。そこで放たれる蠱惑的な魅力。きっとSMのスタッフはこう思ったとおもうのだ。

    どんなにサウンドを燻らせてもジェヒョンの声が勝つ……!

    その手応えがソロデビューに際し、いかんなく発揮されている。

    なんせリード曲が「Smoke」ですから。


    セピア色のジェヒョン、美しい。そして恐ろしいほど猟奇を孕んだひとみ。
    わたしがジェヒョンを知ったのは「英雄; Kick It」とかなり遅いのだが、オールバックの彼を初めてみた時から計り知れなさを察した。

    そのとき生物的な強者感を感じ取ったのはテヨンなのだが、彼がソロ・デビューに際して見せた「真実」はまごころ、茶目っ気、可愛らしさであったから、どんどん心を許していった。ジェヒョンがソロで表現するのはそれとはまたベクトルすら異なる、彼の理想の美しい世界の形成だとわたしは思う。

    SMはグループ楽曲の奇抜で強引な方針とは逆に、ソロではアーティスト意志を尊重する会社であるから、ジェヒョンが普段聴いているようなミドル・テンポのR&Bやミニマムなグルーヴのロック、ムーディなジャズがこの作品に反映されている。

    しかも7曲中(1曲はメイン曲の英語詞)4曲作家として参加しているのだから、入魂の一作であることは間違いない。わたしはこのアルバムを聴くまで、クレジットを見るまで、ジェヒョンにここまで音楽的な情熱があることを理解できていなかったし、まだまだ彼のこともNCTのことも知らないことばかりだと己を恥じたのだけれど。

    とにかく、「Roses」の怠惰で情熱的なムード、「Flamin’ Hot Lemon」の湿度の高さも、「Dandelion」の穏やかさも、「Completely」の果てのない美しさ、「Easy」の軽妙さも、「Can’t Get You」の上等なAOR感もどれもジェヒョンの血肉となった音楽の流れを汲んでいるのだ。

    その美しさ、そのセンス、ひれ伏すしかないだろう。

    このアルバムを聴くと、テヨン入隊を受けてジェヒョンが「WALK」で見せた変化にもなんとなく納得がいく。近年ラップをさらに高く評価されるようになったジェヒョンが、そこにプラスしてテヨンの茶目っ気、陽気を自身にインストールしてみせた。

    ディレクションがあったのかと思っていたけれど、あのバランス感覚はすべて彼の腕だったのかもしれない。そこまで思ってしまう輝きがある、このソロ・アルバム。
    過去にベッキョンのソロ・アルバムでも思ったことだが、この事務所は湿度の高いR&Bを作らせたら右に出るものはいない。
    SMやっぱりやるじゃん、という思いもあり、でもやっぱり一番すごいのはジェヒョン。お見それしました。

    これから大事にこのアルバムを聴いていきたいし、ジェヒョンのソロにも、NCTから今後出てくるソロ・アーティスト、まず、次は悠太!中本悠太の日本デビューに期待大です。

    イリチルの最高のアルバムからそれほど時間も空けずにこのアルバムが来るなんて、今年は良い年だなぁ。

    よかったらシェアしてね!
    • URLをコピーしました!
    目次